MSCBりだっくす〜被害者は誰か?

toshiさんのブログ経由で、ジャルコのMSCB発行リリースを知りました。

まだ内容について詳しくは分析的できていないのですが、株主構成を見ると有限会社雪谷商事山川が議決権の約42%を押さえているようです。プレスリリースによれば、会社と雪谷商事山川との関係は、

有限会社雪谷商事山川は、不動産賃貸事業を主たる事業としており、同社は当社の議決権を42.23%所有しております。また同社の役員の配偶者が当社の取締役をしております。しかしながら同社との間で役員の兼任および取引関係も無く、同社の役員の配偶者である当社の取締役は、当社の取締役3名のうち1名であり半数に至る状況にないため、事業活動を行う上での承認事項など同社からの制約はありません。

と、何だか微妙ですが、MSCBが既存株主の権利内容を希釈化するものだとすれば、一番「被害」を被るのは、明らかにこの筆頭株主です。

この筆頭株主が今回のMSCBの内容を理解した上で発行に賛同しているような場合であって、背景事情として会社が説明している以下のような事情が本当だとすれば、こういう発行をどう考えるべきなんでしょうね?

・・・昨年6月には追加資金として経営コンサルティング契約を締結したカタリスト株式会社より新株予約権の付与を前提として資金を借り入れました。これらの資金を投入し施策を実行したことによって、平成20年の4月から12月までは営業利益ベースで、赤字ではあるものの前年同期比60%の改善が見られました。しかしながら昨今の経済情勢の急変による売上の激減により、今後の運転資金が急速に枯渇している状況であります。
このような企業存続の危機的な状況の中で最優先の経営課題として「緊急かつより厳しい再建計画」を実施することが今後の安定成長、収益力の向上につながるとして新たな「ジャルコ再建計画」を本年1月に策定しました。
(略)
この「構造改革」を実施するための必要資金として、・・・合計で550,000,000円の資金を必要としております。
なお、今回の構造改革に伴うコスト削減額に関しては、月額74百万円を見込んでおります。
この「構造改革」を実行するための資金調達計画として様々な投資家との交渉を行ってまいりました。しかしながらいずれも実行にはいたらず、運転資金が枯渇している現在、最終的には今回の資金調達方法(MSCB)しかありませんでした。
今回のMSCBの発行に対しジャスダック証券取引所からは「上場会社の企業行動に関する規範」から逸脱している行為との強い指摘を受けております。当社としてはその指摘を重く受け止めておりますが、法律に違反してはいない為、流通市場の機能及び株主の権利を深く尊重して取り組んでまいります。当社としては、今回のMSCB発行後に投資家の日々の転換・行使数を適時開示してまいります。
当社は、ジャスダック証券取引所に対してジャルコ再建計画の合理的な基礎を示すよう求められましたが、本日現在、同取引所に示すことができておりません。

実は、昨年事務所にサマー・アソシエイトプログラムで来てもらったロースクールの学生さん向けにモックの事例を使ってケース・メソッド的なセミナーをやったんですが、その時に色々と資料を遡って分析していったときにも、それまで持っていた「トンデモ」一辺倒の印象が少し変わって、実はそれほど悪意に満ちた事例ではないんじゃないかとも思うようになったりしたことがあります。

今回の件も、一見の「トンデモさ」とは別に関係者なりの合理性があるんじゃないかという気もしたりもするところですが、どうなんでしょうねぇ・・・と、余りon goingな話題は避けた方がいいと思いつつ、多分、こういう見方は少ないんじゃないかなとも思ったので、一石だけ投じておきます。