日本のクレジット・デリバティブ市場の不思議

今日はとある研究会でBNPパリバのクレジット調査部チーフクレジットアナリストの中空さんのお話しを聞く機会がありました。

早わかりサブプライム不況 「100年に一度」の金融危機の構造と実相 (朝日新書)

早わかりサブプライム不況 「100年に一度」の金融危機の構造と実相 (朝日新書)

1時間という報告時間に凄まじい情報量を詰め込んでいただき、何だかものすごくお得感が高く、私のような素人でもクレジット・デリバティブ市場のことが分かったような気になったわけですが、お話しを聞いていて、ふと感じたことを少し。

クレジット・デリバティブは必要か?

そもそもクレジット・デリバティブは、ローン供給者や社債保有者などのクレジット・リスクを分散する仕組みであり、経済的には保険と同じ機能を持つと言ってよさそうです。*1
保険と同じなら、元本保有者だけが取引できればよく、そうしたニーズを持たない者までクレジット・デリバティブ市場に参入してデリバティブ自体を投機対象としたりということが起きたために、昨年のような金融危機につながってしまうわけて、これに対処するの一番簡便な方法はクレジット・デリバティブのロング・ポジションを元本までに個別規制するか、何らかの形で総量規制することです。もっとも、このようなことは、このような取引によって手数料を得ている金融機関の強い反対で政治的にはできません・・・なんていう一見もっともらしいけど、個人的にはロジックを感じない話に興味はありません。
要は適正な保険料(プレミアム)をどう算出するかという問題であり、保険数理的な過去のヒストリーに基づいた確率統計論に基づいた価格決定と、多数の市場参加者による価格メカニズムとどちらが効率的かという話であり、クレジット・デリバティブという手段は価格メカニズムを機能させる上で理論的には非常に効果的なはずです。
というわけで、そもそもクレジット・デリバティブが悪玉であるという話ではないはず。

ところが、日本のクレジット・デリバティブ市場は「変」らしい

ところが中空さんの説明によると、金融危機後の日本のクレジット・デリバティブ市場は欧米とは違う特性を持っているとのこと*2
この原因は、ファンダメンタルズよりも需給による部分が大きく、金融危機で需給状況がこのような形になってしまったのは、日本のクレジット・デリバティブ市場が未成熟、あるいは、発展途上のところで今回のようなショックを受けてしまったからだというのが、割合有力な見方だったのですが、本当にそれだけなのかしらん、というのが私の問題意識。
つまり、金融危機の前はそれないにうまくいっていたのではなくて、元々の市場のいびつさが金融危機で顕在化したんではないか、と。

といっても、それだけだと日本の資本市場はすべからく未成熟なだけじゃないかという言い方もあるんですが、クレジット市場については、株式市場なんかとは別の要因があるんじゃないかという気がするわけです。

まあ、勿体ぶることもなくお決まりの「情報の非対称性」という奴ですが、今日は時間も来たので、続きはあとにします。

今年のコンセプトはまったりでいこうと思っているので、時間のあるときに、忘れないうちぐらいに次を書けたらいいですね。

*1:こう考えると、クレジット・デリバティブ特有の(Protection) Sellerと(Protection) Buyerやロングとショートの用語法が馴染むのが分かります

*2:詳しい話は面倒くさいのと、どこまでここで書いていいのか分からないので割愛御免!!